- 塗装とボディカラーの選び方[2025.12.02]
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新しい車を選ぶとき、エンジン性能や燃費、デザインと同じくらい、いや、もしかしたらそれ以上に頭を悩ませるのがボディカラー選びではないでしょうか。「一目惚れした赤色だけど、数年後に色褪せしないかな…」「手入れが楽なのはシルバーだって聞くけど、少し地味じゃないか?」そんな堂々巡りのループに陥ってしまう気持ち、本当によくわかります。
長年自動車業界でお客様の車選びに立ち会ってきましたが、このボディカラーに関するご相談が最も多いと言っても過言ではありません。実は、車の塗装色は単なる見た目の問題に留まらないのです。日々の洗車のしやすさ、傷や汚れの目立ち具合、ひいては数年後に手放す際の査定額にまで、想像以上に大きな影響を及ぼす、非常に奥が深い世界です。
単なる人気カラーの紹介ではなく、プロの視点から「買ってから後悔しない」ための、戦略的な塗装とボディカラーの選び方を、私の経験も交えながら徹底的に解説していきます。
目次
1.傷や汚れが目立たないボディカラーとは?
2.メタリックカラーとソリッドカラーの違い
3.塗装の色選びで気をつけるポイント
4.パールホワイトの塗装の特徴と注意点
5.ブラック塗装はメンテナンスが大変?
6.車のカラーごとの塗装劣化の違い
7.経年劣化しにくい塗装色とは?
8.車の価値を維持するためのカラー選び
9.カラーチェンジ時に注意すべきポイント
10.人気のボディカラーとその耐久性1. 傷や汚れが目立たないボディカラーとは?
「洗車は週末にできれば良い方」「細かい傷はいちいち気にしたくない」そんなあなたにとって、傷や汚れが目立たないボディカラーを選ぶことは、ストレスのない快適なカーライフへの第一歩です。
汚れが目立ちにくいカラー TOP3
1.シルバー
2.グレー(ガンメタリックなど)
3・シャンパンゴールド
なぜこれらの色が汚れに強いのか?答えはシンプルで、多くの汚れ—例えば、砂埃や軽い泥はね—の色が、これらのボディカラーに近い中間色だからです。面白いことに、汚れがボディカラーに馴染んで、一種の保護色のような役割を果たしてくれるわけですね。
以前、私が乗っていたガンメタリックの車は、まさにその恩恵を最大限に享受していました。多少の雨で汚れても、ほとんど気にならない。週末にまとめて洗車するだけで、十分すぎるほどきれいな状態を保てたものです。
逆に、覚悟が必要なカラーは?
ブラック系 黄砂や花粉、水道水が乾いてできる白い輪っか状のシミ(イオンデポジット)が、黒いキャンバスの上ではこれでもかというほど目立ちます。さらに悩ましいのが、洗車時にどうしてもついてしまう太陽光の下でギラギラと見える細かい線傷。これを防ぎ続けるのは、なかなかの根気が必要です。
ホワイト系 雨上がりにボディを伝う、黒い涙のような筋汚れ。これは誰もが目にしたことがあるでしょう。泥はねや、道路のアスファルトから飛んでくる油汚れ(ピッチ・タール)も、白いボディでは隠しようがありません。もちろん、駐車環境(屋根があるか、屋外か)によっても大きく変わりますが、日々のメンテナンスの手間を少しでも軽くしたい、と考えるのであれば、シルバーやグレーといった中間色を選ぶのが最も合理的な判断と言えるでしょう。
関連記事:部分塗装と全塗装のどちらを選ぶべき?
2. メタリックカラーとソリッドカラーの違い
車のカタログを眺めていると、当たり前のように出てくる「メタリック」や「ソリッド」という言葉。これらは塗装の種類を指しており、見た目の印象だけでなく、実は耐久性や修理費用にも関わってきます。
ソリッドカラー
ひと言でいえば、絵の具のような単色の塗装です。
- 特徴:光を反射するキラキラした粒子を含まない、純粋でストレートな色味が魅力です。
- 代表色:ホワイト、ブラック、レッド、イエローなど。
【メリット】
- 価格が安い:塗装の工程がシンプルなため、追加料金なしの標準色に設定されていることが多いです。
- 修理がしやすい:万が一、バンパーを擦ってしまっても、塗装の再現が比較的容易なため、修理費用も安く抑えられる傾向にあります。
【デメリット】
- 紫外線にやや弱い:最近の塗装は非常に高品質ですが、理論上はクリアコートの下の塗膜が直接紫外線に晒されるため、メタリック系に比べて色褪せのリスクは高いと言えます。
- 見た目が単調に感じることも:深みや輝きが少ないため、少しのっぺりとした印象に見える場合があります。
メタリックカラー
塗料の中に、光を反射する微細なアルミ片を混ぜ込んだ塗装です。- 特徴:このアルミ片が光を様々な方向に反射させ、ボディに金属的な輝きと深みを与えます。
【メリット】
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- 高級感のある見た目:光の当たり方で陰影が生まれ、車が立体的に見えます。
これが高級感につながるわけです。 - 耐久性が高い:一般的に塗膜が硬く、上に塗装されるクリア層も厚い傾向にあるため、傷が付きにくく、耐久性にも優れています。
- 高級感のある見た目:光の当たり方で陰影が生まれ、車が立体的に見えます。
【デメリット】
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- 価格が高い:ほとんどの場合、数万円のオプション料金として設定されています。
- 修理費用が高い:修理の際、このキラキラした粒子(メタリック感)を周りと完全に合わせるのが非常に難しく、職人の高い技術が要求されます。結果として、修理費用は高額になりがちです。
個人的には、車の立体感を際立たせ、傷にも強いメタリックについ惹かれてしまいますが、修理時のコストを考えると、ソリッドの合理性も捨てがたい。ここは、ご自身の価値観が問われるポイントですね。
3. 塗装の色選びで気をつけるポイント
ショールームの眩しい照明の下で「これだ!」と心を決めた色が、納車されて太陽の下で対面した瞬間、「あれ、こんな色だったかな…」と感じる。これは、ボディカラー選びにおける、非常によくある”あるある”な失敗談です。私自身、お客様が納車後に少し残念そうにされている姿を何度も見てきました。
こうした「こんなはずじゃなかった」というミスマッチは、なぜ起こるのでしょうか?そして、それを防ぐために、プロが購入前に必ずチェックしているポイントとは何でしょうか。ここでは、後悔しない色選びのための、3つの具体的な鉄則を徹底的に解説します。
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カタログの色は信じるな、太陽の下で実物を見よ
まず大前提として、印刷物であるカタログや、スマートフォンの画面(モニター)の色は、「あくまで参考イメージでしかない」と心得るべきです。色が違って見えるのには、ちゃんとした理由があります。
- 光源(光の種類)の違い:
- ショールームの照明(スポットライトなど)は、車を美しく見せるために、特定の色を強調するように調整されていることが多いです。
- 一方、太陽光は、すべての色をありのままに映し出す「自然光」です。
- この光源の違いだけで、色の見え方は劇的に変わります。
- 光の強さと反射の違い:
- 強い太陽光の下では、メタリックやパールの粒子が激しく反射し、全体的に白っぽく明るく見えることがあります。
- 逆に、曇りの日の柔らかな光の下では、色が沈み込み、本来の深みや濃さが際立ちます。
以前、お客様がカタログの鮮やかな「レーシングブルー」に惹かれて購入を決断されましたが、納車後、「思っていたよりもずっと落ち着いた、深みのある紺色だった」と少し残念そうにしていたのが印象に残っています。
【失敗しないための確認ステップ】
鉄則は、必ず屋外で実車を確認することです。その際、以下のステップを踏むと、より確実です。
- まずはショールーム(屋内)で第一印象を確認する。
- 次に、必ず屋外の「日なた」に出してもらう。
(ここでメタリックやパールの輝き方、色の鮮やかさを確認します) - 可能であれば、屋外の「日陰」でも確認する。
(ソリッドカラーの深みや、暗い色の重厚感、色の正確なトーンを確認します) - もしできるなら、時間帯(朝、昼、夕方)や天候(晴れ、曇り)を変えて見比べる。
(夕日に照らされた時の赤みなど、新たな表情を発見できます)
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「夜の顔」も想像することを忘れるな
あなたの車は、日中しか走りませんか?そんなことはありませんよね。夜、街灯やコンビニの照明に照らされた時の表情も、愛車の大事な「顔」です。
特にパールやメタリック系の塗装は、夜の光を浴びることで、日中とは全く違う妖艶な輝きを放つことがあります。
- ・日中は明るいシルバーに見えた車が、
夜のオレンジ色の街灯下では、深みのあるシャンパンゴールドに見えたり。 - ・昼間は控えめな輝きのパールホワイトが、
コンビニの真っ白な照明を浴びて、妖艶なほどに輝いたり。
【購入後の満足度を高めるシミュレーション】
色選びがもっと楽しく、そして的確になるように、以下の項目をご自身の生活に当てはめて想像してみてください。
- あなたの主な運転時間帯はいつですか?
- (例:平日の朝・夜の通勤がメイン? それとも週末の日中のお出かけ?)
- あなたの主な駐車場所はどこですか?
- (例:照明付きの自宅ガレージ? 屋根のない月極駐車場? 職場の薄暗い立体駐車場?)
- 夜間にガソリンスタンドやコンビニに立ち寄った時、自分の車がどう見えるか想像してみましょう。
(その「夜の顔」は、あなたの好みと一致していますか?)
- 「色の面積効果」という、目の錯覚の罠に注意
ディーラーの商談テーブルで見せられるカラーサンプルは、手のひらサイズの小さな板(色見本)がほとんどです。しかし、これが最大の罠です。
色の印象は、面積が小さい場合と、車全体の大きな面で見る場合とでは、人間の目の錯覚によって劇的に変わります。これを「色の面積効果」と呼びます。
- 明るい色(白、黄色、明るい赤など)
- 面積が広くなるほど、より一層明るく、鮮やかに、そして膨張して大きく見えます。
- 暗い色(黒、紺、濃いグレーなど)
- 面積が広くなるほど、より一層重厚で、引き締まって(収縮して)見えます。
【失敗を回避するための具体的な行動術】
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- ・手のひらサイズのカラーサンプルは「あくまで参考程度」と心得る。
(その小さな板を見て「この色だ!」と即決するのは危険です) - サンプル板を、屋外で実際の車のボンネットやドアに当ててみる。
(ボディの曲面や、周囲の景色との比較で見ることで、少し印象が変わります)
- ・手のひらサイズのカラーサンプルは「あくまで参考程度」と心得る。
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- 最重要:できる限り、希望する色の「実車」を探してもらう。
- たとえ車種が違っても構いません。「あの車種の、あの色と同じ色が見たい」と伝え、中古車展示場や、他の顧客の納車待ちの車など、実車で「大きな面」としての色を確認することが、失敗を避ける何よりの秘訣です。
- 「派手かな?」は、意外と「ちょうどいい」のサイン。
- 小さなサンプルで「少し派手かな?」と感じる鮮やかな色は、車全体で見ると意外としっくりくる(むしろカッコいい)ことが多いです。
- 逆に、サンプルで「落ち着いていて、ちょうどいい」と感じる色は、実車で見ると「想像していたよりも地味だった…」となるリスクをはらんでいます。
4. パールホワイトの塗装の特徴と注意点
いつの時代も、どの車種でも、不動の人気カラーとしてトップに君臨するのがパールホワイトです。その上品で深みのある輝きは、多くの人を魅了してやみません。しかし、なぜ他のソリッド(単色)の白と違い、数万円の追加料金(オプションカラー)がかかるのでしょうか。
その秘密は、塗装の「構造」にあります。そして、その特別な構造こそが、オーナーになってから気づく「こんなはずじゃなかった」という注意点にも直結しているのです。
パールホワイトの輝きの秘密
なぜ、あの真珠のような独特の輝きが生まれるのか。それは、塗料に混ぜ込まれた「あるモノ」と、複雑な「塗装の層」に理由があります。
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- 正体は「雲母(マイカ)」という天然鉱物
- パールホワイトの「パール」の正体は、雲母(うんも)という天然の鉱物を、非常に細かく(ミクロン単位で)砕いた粒子(マイカフレーク)です。
- 理科の授業で見た、キラキラと光る石を想像していただくと分かりやすいかもしれません。あの雲母の粒子が、塗料の中に無数に混ぜ込まれています。
- 正体は「雲母(マイカ)」という天然鉱物
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- 「光の層」が生み出す、複雑な深み
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- パール塗装は、ソリッドカラーのような単純な1層塗りではありません。
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- 第1層(カラーベース):まず、下地として「白」の塗料を塗ります。
- 第2層(パールベース):その上に、前述の雲母(マイカ)の粒子を含んだ「半透明のパール層」を重ねて塗ります。
- 第3層(クリアコート):最後に、これらの層を保護し、深いツヤを出すための「透明なクリア層」を塗ります。
- ボディに当たった光は、この複雑な層を透過・屈折・反射します。光がクリア層とパール層を通り抜け、下地の白層に当たり、再びパール層の雲母の粒子に反射しながら表面に戻ってくる。この「光が通過する層の厚み」と「雲母による複雑な乱反射」こそが、一般的な白にはない、真珠(パール)のような独特の奥行きと輝きを生み出すのです。
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- 光の角度で「変化する表情」
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- これがパール最大の魅力です。光の当たる角度によって、パール層内部での光の反射の仕方が変わるため、色が変化して見えます。
- 日なたでは:眩しいほどに輝く、明るい白。
- 日陰では:しっとりとした、高級な絹のような白。
- 見る角度によっては:白の中に、かすかにシャンパンゴールドや、淡いピンク、ブルーのような色味がオーロラのように見え隠れします。
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パールホワイトの「覚悟すべき」注意点
しかし、その特別な美しさと引き換えに、オーナーは2つの大きな「代償」とも言えるリスクを背負うことになります。これは、購入前に必ず理解しておくべき点です。
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- 修理費用が「とにかく高い」という現実
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- もし、パールホワイトのボディを擦ったり、凹ませたりした場合、その修理費用はあなたの想像を上回るかもしれません。
- なぜ高いのか?:上記の「複雑な3層構造」を、今度は人間の手作業で、傷ついた部分だけ完璧に再現しなければならないからです。
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- 技術的な難易度:
- まず、下地となる「白」の色を、周囲の(日焼けした)色と合わせるのが難しい。
- 次に、パール層の「粒子の密度」や「吹き付ける回数・角度」を、隣のパネルと完全に一致させるのが至難の業です。(吹き付けが厚すぎるとギラギラしすぎ、薄すぎるとパール感が足りなくなります)
- 費用の目安:結果として、一般的なソリッドカラーの修理費用に比べ、1.5倍から2倍以上になることも珍しくありません。手のひらサイズの傷でも、数万円。バンパー1本の修理で10万円を超えるケースも覚悟しておく必要があります。
- 技術的な難易度:
- 「完璧な色合わせ(ぼかし塗装)」が極めて難しい
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- これが、修理現場で最も職人を悩ませる問題です。
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- なぜ難しいのか?:あなたの車の既存のパネル(無傷の部分)は、新車時から数年間、紫外線や雨風にさらされ、ごく僅かに色が変化(日焼けや黄ばみ)しています。
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- 色のズレの発生:そこに、修理箇所(例:運転席ドア1枚)だけを「新品のパールホワイト」で塗ってしまうと、どうなるでしょうか。そのドアだけが不自然に白く浮き上がり、隣接するパネル(フロントフェンダーやリアドア)との色の差が、誰の目にも明らかになってしまいます。
- 必須となる「ぼかし塗装」:
- この色のズレを防ぐため、「ぼかし塗装」という高等技術が必須となります。
- これは、修理するドアだけでなく、その隣にある無傷のパネル(フェンダーやリアドア)にまで、新しい塗料をグラデーション状に薄く吹き付け、色の境目を分からなくする技術です。
- 結果として、ドアの小さな傷の修理でも、作業範囲が「合計3パネル」に及ぶことがあり、これが工賃と材料費をさらに跳ね上げる大きな原因となります。
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その美しさは、全カラーの中でも唯一無二。しかし、万が一の際の修理コストと、修理の難易度もまた唯一無二です。パールホワイトを選ぶということは、そのリスクを理解した上で、車両保険への加入を必須条件として検討する、という覚悟が求められる色なのです。
関連記事:塗装剥げとコーティングの関係
5. ブラック塗装はメンテナンスが大変?
「黒い車はカッコいい。でも、手入れが地獄」。これは、自動車好きの間で語り継がれる定説です。果たして、その真相は?私の答えは、「地獄とまでは言いませんが、その美しさを維持するには、相応の愛情と覚悟が試される」です。
なぜ黒は大変なのか?それは、黒という色が他のどの色よりも、ボディ表面の「アラ」を正直に映し出してしまうからです。
ブラック塗装の三大試練
- 洗車傷との終わりなき戦い どんなに優しく洗っても、タオルで拭き上げる際に微細な傷(スクラッチ傷)は避けられません。普段は見えなくても、太陽光に当たると、その無数の傷がクモの巣のようにギラつき、せっかくの艶を台無しにしてしまいます。
- 雨すらも敵になる「イオンデポジット」
ボディに残った雨粒が乾くと、水道水や雨水に含まれるミネラル分が白いリング状のシミとしてこびりつきます。これがイオンデポジット。一度固着すると、普通のシャンプーではまず取れません。放置すれば塗装を陥没させる「ウォータースポット」へと進化し、研磨するしかなくなります。 - 夏場は「目玉焼きが焼ける」ほどの高温に
黒は熱を吸収する色の代表格。JAFのテストでは、炎天下の黒いボディ表面は80度以上に達したというデータもあります。この強烈な熱は、塗装そのものや、施工したコーティング被膜にダメージを与え、劣化を早める大きな原因となります。
過去に黒いセダンを所有していた友人は、「週末にピカピカに磨き上げても、月曜に雨が降れば、もうすべてがリセットされる。この虚しさがわかるかい?」と、冗談交じりに嘆いていました。
ブラックボディを選ぶということは、その圧倒的な存在感を手に入れる代わりに、日々の丁寧なケアを車と約束するということなのです。
6. 車のカラーごとの塗装劣化の違い
車は買った瞬間から、紫外線、酸性雨、鳥のフン、道路の鉄粉といった、数々の外的要因との戦いが始まります。これらは全て塗装を劣化させ、色褪せや光沢の喪失を引き起こしますが、実はそのダメージの受けやすさは、ボディカラーによって明確な差があるのです。
紫外線ダメージ、受けやすいのはどっち?
- 紫外線に弱い(色褪せしやすい)代表格
- 赤、黄色などの鮮やかなソリッドカラー:これらの色を構成する顔料は、紫外線のエネルギーによって化学構造が破壊されやすい性質を持っています。昔の赤い郵便ポストが、白っぽくカサカサになっているのを想像してもらうと分かりやすいかもしれません。あれが、まさに紫外線による色褪せの典型です。
- 紫外線に強い(色褪せしにくい)代表格
- 白、シルバー:これらの色は、太陽光(紫外線)を効率よく反射するため、塗装面が受けるダメージの総量が少なくなります。
- 黒:黒の顔料に使われる「カーボンブラック」という成分は、実は非常に安定しており、紫外線による色褪せ自体は起こりにくいです。ただし、前述の通り、光沢が失われることで「劣化した」という印象を与えやすい、という別の側面があります。
面白いことに、メタリックやパール系の塗装は、ベースの色の上に厚いクリア塗装が施されているため、一般的にソリッドカラーよりも紫外線への耐性は高いとされています。
とはいえ、どんな色であっても、青空駐車でメンテナンスフリーというわけにはいきません。愛車を長く美しく保つ秘訣は、結局のところ、
- できるだけ屋根付きの場所に保管する
- 汚れを長期間放置せず、定期的に洗車する
- 質の良いコーティングで塗装面を保護する といった地道な対策に尽きるのです。
関連記事:塗装後のメンテナンスと長持ちさせる方法
7. 経年劣化しにくい塗装色とは?
「5年後、10年後も、買った時の感動を色褪せさせたくない」もしあなたがそう願うなら、選ぶべきは「経年劣化しにくい」カラーです。
車の経年劣化の二大要因は、ここまでお話ししてきた「紫外線による色褪せ」と「傷や汚れによるダメージ」です。この両方の攻撃に対して、最も優れた防御力を発揮するカラーは何でしょうか?
私の経験上、それは紛れもなくシルバーとホワイトです。
なぜ「シルバー」は最強なのか?
- 色褪せに滅法強い:紫外線を効率よく反射し、顔料自体も化学的に安定しているため、長期間にわたって新車時の色味を保ちます。
- 傷や汚れをカモフラージュする:これが最大の強みかもしれません。中間色であるため、小さな擦り傷や砂埃、雨染みなどがボディカラーに紛れて、本当に目立ちません。結果として、見た目の「ヤレ感」が出にくいのです。
- 補修が比較的しやすい:万が一の再塗装時も、パールホワイトや特殊なメタリックカラーに比べて色合わせがしやすく、修理跡が目立ちにくいというメリットもあります。
なぜ「ホワイト」も強いのか?
- 色褪せへの耐性はNo.1:全カラーの中で最も光を反射するため、紫外線によるダメージを最も受けにくい色です。色褪せのリスクはほぼゼロと考えてよいでしょう。
- 洗車傷が見えづらい:ボディカラーが明るいため、太陽光が当たってもスクラッチ傷による光の乱反射が目立ちにくいです。
とはいえ、ホワイトの場合は黒い水垢汚れが目立つという弱点があるため、定期的なメンテナンスは欠かせません。
10年以上経過した同じ車種を見比べると、最も新車時の輝きを保っているように見えるのは、やはりシルバーやホワイトの個体が多い。これは紛れもない事実です。もしリセールバリューを最優先せず、一台の車と長く、気楽に付き合っていきたいと考えるなら、これらの色は最高の選択肢となるでしょう。
関連記事:塗装とコーティングの関係8. 車の価値を維持するためのカラー選び
車は資産です。購入した瞬間からその価値は下がり始めますが、数年後に手放す際の売却価格(リセールバリュー)は、選んだボディカラーによって、時に数十万円単位で変わってくるという事実をご存知でしょうか。
中古車市場の原理は単純です。「欲しい人が多い色=高く売れる」。この観点から、最も有利な、つまり最もリセールバリューが高いボディカラーは、「ホワイトパール」と「ブラック」の二強です。
- ホワイトパール:清潔感と高級感を両立し、性別、年齢、車種を問わず、あらゆる層から絶大な支持を受けます。中古車を探す際、多くの人がまず条件に入れる色だからです。
- ブラック:重厚感と威厳を演出し、特に大型のセダンやSUV、ミニバンで圧倒的な人気を誇ります。アルファードやハリアーといった人気車種では、他の色と比べて驚くほどの高値で取引されています。
では、逆にリセールで不利になりがちな色は?それは、レッド、イエロー、グリーンといった個性的な有彩色です。これらの色は、特定のファンには強く響きますが、一般的には「派手すぎて乗りにくい」と敬遠されがちで、買い手が限定されてしまうのです。
全く同じ年式・走行距離のコンパクトカーで、一方はパールホワイト、もう一方は鮮やかなライムグリーン。査定額の差は、なんと30万円以上にもなりました。
もちろん、「好きな色に乗るのが一番!」という考えも素晴らしいと思います。しかし、「数年後には乗り換えるだろうな」「少しでも次の車の足しにしたい」と少しでも考えているのであれば、白・黒・銀の三大定番カラーの中から選んでおくのが、最も賢明で、後悔の少ない選択と言えるでしょう。
9. カラーチェンジ時に注意すべきポイント
「今の車の色、ちょっと飽きてきたな…」「中古で買ったけど、本当は違う色が良かった」そんな風に感じた時、「全塗装(オールペン)」や「カーラッピング」によるカラーチェンジは、非常に魅力的に映るかもしれません。しかし、その手軽そうなイメージの裏には、知っておかなければならない重大なリスクが潜んでいます。
カラーチェンジを検討する前に、必ず頭に入れておくべき3つの注意点があります。
- 査定額は「事故車」並みに下落する
これが最大のデメリットです。どんなに美しく、高価な塗料で仕上げられていても、メーカー出荷時の純正塗装ではない車は、中古車市場では「修復歴車(事故車)」とほぼ同等の扱いを受け、査定額は著しく下がります。なぜなら、査定士から見ると、「なぜわざわざ全塗装したのか?大きな事故を隠しているのではないか?」という疑念を払拭できないからです。 - 「元に戻す」のはほぼ不可能
一度全塗装してしまえば、元の純正塗装の状態に戻すことは、現実的に不可能です。塗装を全て剥がし、再塗装するには、新車が買えてしまうほどの莫大な費用がかかります。フィルムを貼るカーラッピングなら剥がせますが、剥がす際にも専門工賃が必要ですし、長期間貼っていた場合、塗装面を傷めてしまうリスクもゼロではありません。 - 車検証の「色」の変更手続きが必須
道路運送車両法では、車の塗装色も登録情報の一部です。そのため、全塗装などで大きく色を変更した場合は、運輸支局(陸運局)で構造変更手続き(色の変更登録)をしなければなりません。これを怠ると、法律違反になる可能性があります。
カラーチェンジは、愛車に新たな個性を与える素晴らしいカスタムですが、その一方で資産価値という側面では非常に大きなリスクを伴います。「この車を一生乗り潰す!」という強い覚悟がない限りは、慎重に検討すべき選択肢と言えるでしょう。
10. 人気のボディカラーとその耐久性
さて、ここまで様々な角度からボディカラーを分析してきましたが、最後に、現在の中古車市場での人気と、長期的な耐久性という2つの軸で、主要なカラーをまとめて評価してみましょう。
- ホワイトパール
- 人気:◎(リセール最強)
- 耐久性:◎(色褪せに強い)
- メンテナンス性:△(水垢は目立つ。修理費が高いのがネック)
- ブラック
- 人気:◎(リセール最強)
- 耐久性:○(色褪せ自体はしにくい)
- メンテナンス性:×(傷、染み、汚れ、全てが目立つ。マメな手入れが必須)
- シルバー/グレー
- 人気:○(安定した需要)
- 耐久性:◎(色褪せに強い)
- メンテナンス性:◎(傷、汚れが最も目立たない。究極のズボラカラー)
- ブルー系
- 人気:○(近年、特に濃紺系の人気が上昇中)
- 耐久性:△(濃色は色褪せ、淡色は汚れが目立つ傾向がある)
- メンテナンス性:△(濃紺はブラックに近いシビアさが求められる)
- レッド系
- 人気:△(車種によるが、一般的には好みが分かれる)
- 耐久性:×(全カラーの中で最も紫外線による色褪せのリスクが高い)
- メンテナンス性:△(色褪せを防ぐため、高品質なコーティングでの保護を強く推奨)
このように見てみると、人気と耐久性、メンテナンス性が全て満点の、完璧なカラーは存在しないことがわかります。どの色を選ぶか、それは結局、あなたが何を最も重視するかにかかっているのです。
関連記事:塗装剥げを防ぐための正しい洗車方法
後悔しないための、戦略的カラー選び
車のボディカラー選びは、単なる「好み」で片付けられるほど、単純なものではありません。それは、日々のカーライフの快適さ、長期的な愛車の美観、そして将来の資産価値までを左右する、極めて重要な「戦略的選択」なのです。
ここまで、傷や汚れの目立ちやすさという実用的な視点から、塗装の種類、経年劣化、そしてリセールバリューという資産的な視点まで、多角的に解説してきました。
最もお伝えしたかったことは、それぞれの色には必ず光と影、つまりメリットとデメリットがあるという事実です。「人気No.1のパールホワイトは、修理費もNo.1」「手入れが楽なシルバーは、個性が出しにくい」「情熱的なレッドは、紫外線に弱い」――このトレードオフの関係を正しく理解することこそが、後悔しない色選びの第一歩に他なりません。
もし、あなたが今まさにカタログを前にして頭を抱えているなら、まずは次の2つのアクションを試してみてください。
- 近所の駐車場を「劣化度調査」の目で歩いてみる 様々な年式の、様々な色の車が、実際にどのように汚れ、どのように輝きを失っているか。そこに、カタログでは決してわからないリアルな答えがあります。
- 自分の「カーライフ5カ年計画」を5分だけ想像してみる 「自分は週に何回洗車するだろうか?」「主な駐車場所は屋根の下か、青空か?」「何年後にこの車を売る可能性があるだろうか?」――この簡単な自問自答が、あなたにとって本当にフィットする色を教えてくれるはずです。
最高のパートナーとなる一台の色を、ぜひ楽しみながら、そして戦略的に選んでください。
- 修理費用が「とにかく高い」という現実
- 「光の層」が生み出す、複雑な深み
- 最重要:できる限り、希望する色の「実車」を探してもらう。


















