• 全て
  • ニュース・イベント
  • 板金施工事例
  • コラム
市販の「傷消しコンパウンド」で失敗しない使い方と選び方[2026.02.16]

この記事でわかること

傷の状態に合わせた正しい「番手(粒子の粗さ)」の選び方

「自分で消せる傷」と「プロに頼むべき傷」の明確な見極め基準

余計な傷を増やさないための、スポンジの動かし方と力加減

愛車に見覚えのない白い擦り傷がついているのを見つけたとき、あるいは不注意で壁にこすってしまったとき、誰もが一度は「これ、自分で直せないかな?」と考えるはずです。

カー用品店に行けば、数多くの「傷消しコンパウンド」が並んでいます。「塗るだけでピカピカ!」「魔法のように傷が消える!」といった魅力的なキャッチコピーを目にすると、簡単に直せそうな気がしてきますよね。

しかし、実はコンパウンドは「使い方を一歩間違えると、傷を消すどころか、かえって傷を増やしたり、塗装を台無しにしたりする諸刃の剣」でもあります。私がこれまで見てきた中にも、「小さな傷を消そうとして、周りの塗装まで白く曇らせてしまい、泣く泣く修理に出した」というケースが数多くありました。

これから、プロの現場で培った知識をもとに、市販のコンパウンドを使って「確実に、安全に」傷を消すための具体的な手順と選び方を解説します。正しい知識さえあれば、コンパウンドは愛車を美しく保つための最強の味方になります。

1. コンパウンドとは?

まず根本的な理解として、「コンパウンドとは何なのか」を正しく把握しておく必要があります。多くの人が誤解しているのですが、コンパウンドは「傷を埋める魔法の薬」でも「汚れを溶かす洗剤」でもありません。

その正体は、「粉末状の研磨剤(ヤスリ)を薬剤に混ぜ込んだもの」です。

つまり、コンパウンドで「傷が消える」という現象は、傷そのものが消滅しているわけではなく、「傷の周囲の塗装をミクロン単位で削り落とし、傷の底と同じ高さまで平らにすることで、見えなくしている」というのが物理的な事実なのです。

「液体」と「ペースト(練り)」の違い

カー用品店に行くと、チューブに入った歯磨き粉のようなタイプと、ボトルに入った液体タイプの2種類があることに気づくでしょう。これらは使い勝手や研磨力が異なります。

  • ペースト(練り)タイプ:
    チューブや缶に入っています。粘度が高く、垂直な面(ドアやバンパー)に塗っても垂れにくいのが特徴です。研磨力が高いものが多く、深い傷や頑固な汚れをピンポイントで攻めるのに向いています。ただし、乾きやすく、拭き取りが少し重いというデメリットもあります。
  • リキッド(液体)タイプ:
    ボトルに入っています。サラサラしており、伸びが良く、広い範囲(ボンネット全体など)を磨くのに適しています。粒子が細かく均一に混ざりやすいため、ムラになりにくく、初心者にはこちらが扱いやすいとされています。最近の主流はこのリキッドタイプです。

「削る」ことへのリスク管理

「削って綺麗にする」ということは、作業をするたびに車の塗装(クリア層)が薄くなっていることを意味します。

車の塗装は、一般的に髪の毛数本分程度の厚みしかありません。その中でも、私たちが磨いている一番上の透明な膜「クリア層」は、わずか0.03mm〜0.05mm程度の厚さです。無闇にゴシゴシと力を入れて磨き続ければ、あっという間にクリア層がなくなり、下地が出てしまいます。

だからこそ、「どの種類のコンパウンド」を「どれくらいの力加減」で使うかが、仕上がりを左右する決定的な要素になるのです。この前提を忘れないようにしてください。

関連記事:傷消しの費用相場と安く済ませる方法

2. 粒子の粗さ(番手)の種類と役割

紙やすりに「粗目」「細目」があるように、コンパウンドにも粒子の大きさによってランク(番手)があります。DIYでの失敗の多くは、この番手の選び方を間違えていることに起因します。

「傷が深いから、強力なやつで一気に消したい!」と、いきなり粗いコンパウンドを使うのは非常に危険です。逆に、深い傷に対して極細のコンパウンドで何時間磨いても、効果は現れません。

番手の種類と適切な使い分け

メーカーによって呼び方は多少異なりますが、基本的には以下の3段階(または4段階)に分かれています。それぞれの役割と特徴を整理しました。

種類(番手目安) 特徴・研磨力 主な用途
粗目
(#1000〜#2000)
研磨力が非常に強い。
削るスピードは早いが、磨いた後に必ず「磨き傷」が残る。
深い線傷の除去。
塗装肌の調整。
頑固な水垢落とし。
細目・中目
(#3000〜#5000)
研磨力と仕上がりのバランスが良い。
汎用性が高い。
粗目でついた磨き傷を消す。
浅い洗車傷の除去。
くすみの除去。
極細・超微粒子
(#7000〜#9800)
研磨力は弱く、ツヤ出し効果が高い。
鏡面仕上げに必須。
最終仕上げ。
細目で残った微細な曇りを取る。
濃色車のオーロラマーク消し。

初心者が揃えるべき「トライアルセット」

「どれを買えばいいかわからない」という方は、単品で購入するのではなく、粗目・細目・極細の3種類が少量ずつセットになった「トライアルセット」を購入することを強くおすすめします。

なぜなら、傷消し作業は「粗いもので削って、細かいもので整える」という工程が基本だからです。粗目だけ買って作業を終えると、傷は消えたけれど、その部分だけツヤがなくなり白っぽく曇ったままになってしまいます。

逆に、そこまで深くない傷であれば、「細目」や「極細」から試してみて、落ちなければ「粗目」を使う、というように「弱いものから順に試す」のが失敗しない鉄則です。

3. コンパウンドで傷消しできる傷、できない傷

コンパウンドは万能ではありません。「どんな傷でも消える」と思って作業を始めると、いつまで経っても消えない傷を削り続け、最終的に塗装を剥がしてしまうことになります。

作業を始める前に、目の前の傷が「DIYで消せる範囲なのか」を冷静に見極める必要があります。

「爪チェック」で見極める

最も簡単で確実な判断方法は、自分の爪を使ったチェックです。傷に対して垂直に爪を軽く滑らせてみてください。

傷消し可否の判断チェックリスト


  • 爪が引っかからない → 【消せる可能性大】 クリア層表面の浅い傷です。

  • 少し引っかかるが止まらない → 【目立たなくはできる】 完全には消えないかもしれませんが、かなり改善します。

  • ガチッと爪が止まる → 【コンパウンドでは無理】 塗装の下地まで達しています。タッチペンかプロの板金塗装が必要です。

塗装の構造と傷の深さ

車の塗装は、鉄板の上に「下塗り(錆止め)」「中塗り」「上塗り(カラー層)」「クリア層(透明保護膜)」の順で層になっています。

コンパウンドで安全に消せるのは、一番上の「クリア層」についている傷だけです。

もし、傷の部分が「白く」見えている場合、それはクリア層の傷なので消せる可能性が高いです。しかし、傷の奥に「黒い色(樹脂)」や「銀色(鉄板)」、あるいはボディカラーとは違う色が見えている場合は、クリア層を貫通しています。これをコンパウンドで磨くと、傷口を広げてしまうだけなので絶対にやめましょう。

相手の塗料が付着している場合

ガードレールや電柱、他の車と擦ってしまった際に付いた「相手の塗料」は、一見ひどい傷に見えますが、実はコンパウンドで一番綺麗に落ちるパターンです。

この場合、自分の車の塗装が削れているのではなく、相手の塗料が上に乗っかっているだけだからです。以下の表を参考に、対処法を判断してください。

傷の種類 状態 コンパウンドの効果
付着傷
(相手の塗料)
こすった相手の色が移っている。
凹みはない。
◎ 非常に効果的
簡単に除去でき、元通りになる可能性が高い。
洗車傷・擦り傷 光に当てると見える渦巻き状の傷。
ドアノブ周りの爪痕。
○ 効果あり
極細〜細目で磨けば綺麗に消える。
下地露出傷 水をかけても傷が見えなくならない。
色が欠けている。
× 効果なし
磨くと悪化する。タッチアップペンが必要。

4. 必要な道具(スポンジ・クロス)

「よし、コンパウンドは買った!あとは家にある雑巾で磨けばいいかな?」

ちょっと待ってください。その判断が、最大の失敗原因になります。コンパウンドの効果を最大限に引き出し、かつ失敗を防ぐためには、薬剤選びと同じくらい「道具選び」が重要です。

使い古したタオルや雑巾には、繊維の中に目に見えない砂埃や硬くなった繊維が残っています。これでコンパウンドをこすりつけると、傷を消すどころか、新たな傷(スクラッチ傷)を無数につけてしまうことになります。

塗装の構造と傷の深さ

【必ず用意すべき「三種の神器」】

DIY磨きを成功させるために、以下の3つは必ず揃えてください。どれも数百円で手に入るものですが、仕上がりのクオリティは雲泥の差になります。

  1. コンパウンド専用スポンジ:
    一般的な洗車スポンジとは違い、コシが強く、目が詰まっています。圧力を均一にかけることができ、無駄な力を入れずに研磨できます。「粗目用」「細目用」など、番手ごとに使い分ける必要があるため、最低2〜3個は用意しましょう。
  2. マイクロファイバークロス:
    磨いた後の拭き取りや、状態確認に使います。繊維が極細で柔らかいため、拭き取り傷がつきにくいのが特徴です。これも番手ごとに変えるのが理想なので、複数枚セットのものがおすすめです。
  3. マスキングテープ:
    塗装の知識がある人ほど、これを重要視します。樹脂パーツやメッキ部分、ゴムモールなど、「磨いてはいけない部分」を保護するために貼ります。

塗装の構造と傷の深さ

【道具の使い回しは厳禁】

ここで一つ、絶対に守ってほしいルールがあります。それは、「違う番手のコンパウンドを使うときは、必ずスポンジとクロスを新しいものに変える」ということです。

例えば、「粗目」で磨いたスポンジをそのまま洗って「極細」で使ったとします。どんなに綺麗に洗ったつもりでも、スポンジの奥には「粗目の粒子」が残っています。その状態で仕上げ磨きをすると、粗い粒子が混ざり込んでしまい、せっかくツヤを出そうとしているのに、また傷をつけてしまうことになるのです。

アイテム 選び方のポイント 備考
スポンジ 「高密度」「研磨用」と書かれたもの。
100均の食器用は絶対NG。
小さくカットして使うと細かい部分も磨きやすい。
クロス フチ(縫い目)がない「エッジレス」タイプがベスト。
毛足が長いものが良い。
汚れたらすぐ面を変えるか、新しいものを使う。
マスキング 車用(建築用)の幅15mm〜20mm程度のもの。
糊残りが少ないタイプ。
ライト類や未塗装樹脂パーツを保護する。

関連記事はこちら:傷消しとコーティングの関係

5. DIYで失敗しない正しい磨き方

道具が揃ったら、いよいよ実践です。ここでは、自己流でやってしまいがちな失敗を防ぐための「プロ直伝の磨き手順」をステップバイステップで解説します。

最大のポイントは、「いきなりゴシゴシこすらない」こと。慎重すぎるくらいが丁度いいのです。

塗装の構造と傷の深さ

STEP 1:徹底的な洗車と下地作り

まず、傷周辺を水洗いし、砂埃を完全に除去します。もしボディがザラザラしている場合は、鉄粉除去粘土や鉄粉除去剤を使ってツルツルの状態にします。

この工程をサボると、コンパウンドをかけた瞬間に、残っていた砂粒を引きずってしまい、「ジャリッ」という音と共に深くて長い傷が入ってしまいます。これだけは絶対に避けてください。

STEP 2:マスキングで保護する

傷の近くに、黒い樹脂パーツやゴムモール、ヘッドライト、エンブレムなどがある場合は、マスキングテープを貼って保護します。

コンパウンドが樹脂パーツの細かいシボ(溝)に入り込むと、乾燥した後に白く固まってしまい、除去するのが非常に困難になります。「ちょっとだけだから大丈夫」と思わず、丁寧に貼るのが後悔しないコツです。

STEP 3:コンパウンドをつける

スポンジの黒い部分(柔らかい面)に、小豆大くらいのコンパウンドをとります。ボディに直接垂らす人もいますが、それだと液剤が多くつきすぎてムラになりやすいので、スポンジにつけるのが基本です。

最初は「細目」または「極細」からスタートします。いきなり粗目を使ってはいけません。

STEP 4:「直線」で磨く

ここが最も重要です。磨くときは、「縦・横・縦・横」と直線を意識して磨きます。

よくワックスがけのように「円を描いてクルクル」磨く人がいますが、これはNGです。円運動で磨くと、磨き傷が乱反射して目立ちやすくなります(オーロラマークの原因)。また、力の入り方にムラができ、均一に削れません。

スポンジに手のひらを当て、均等に力が加わるようにし、10cm〜20cmくらいの範囲を小刻みに往復させます。

STEP 5:拭き取りと確認

コンパウンドが乾燥して白くなってきたら、研磨力が落ちてきたサインです。一度マイクロファイバークロスで優しく拭き取り、傷の状態を確認します。

まだ傷が残っているようなら、もう一度コンパウンドをつけて磨きます。「細目」で何度やっても消えない場合に初めて、番手を一つ落として「粗目」の使用を検討します。

この「磨く → 拭く → 確認する」というサイクルを、こまめに繰り返すことが成功への近道です。一気に終わらせようとせず、少しずつ傷を追い込んでいきましょう。

6. 磨きすぎで塗装を剥がすリスク

コンパウンド作業において、最も恐ろしい失敗。それは傷が消えないことではなく、「磨きすぎて塗装そのものを剥がしてしまう(下地を出してしまう)」ことです。

先述した通り、コンパウンドは「塗装を削る行為」です。特に、私たち一般ユーザーが手作業で行う場合、力加減のムラや、集中しすぎによる「磨きすぎ」が頻繁に起こります。ここでは、絶対に磨いてはいけない「危険地帯」と、引き際の見極め方について解説します。

塗装の構造と傷の深さ

最も危険なのは「プレスライン」と「カド」

車のボディには、デザイン上のアクセントとして、山折りに尖っている部分(プレスライン)や、パネルの端(エッジ)があります。これらの部分は、平らな面に比べて塗装が非常に薄く、かつ圧力が一点に集中しやすいという特徴があります。

平らなボンネットと同じ感覚で、プレスラインの上をゴシゴシ跨ぐように磨くと、数秒でクリア層が飛び、下地の色が出てしまいます。一度下地が出てしまうと、もうコンパウンドでは修正不可能です。再塗装には数万円の費用がかかります。

部位 リスク度 磨き方の注意点
平面(ボンネット中央など) 比較的安全。手のひら全体で圧を分散させる。
プレスライン(折れ目) 高(危険) 絶対に跨いで磨かない。マスキングで保護するか、指先で避けて磨く。
パネルの縁(エッジ) 高(危険) スポンジが引っかかりやすく、塗装が薄い。触らないのが無難。
樹脂パーツ(バンパーなど) 金属部分より放熱しにくく、摩擦熱で塗膜が溶けやすいので優しく磨く。

塗装の構造と傷の深さ

摩擦熱による「焼き付き」に注意

「早く傷を消したい」と焦って、同じ場所を強い力で高速でこすり続けると、摩擦熱が発生します。

塗装は熱に弱く、高温になると柔らかくなります。その状態でさらにコンパウンドでこすると、塗装が溶けて絡まり、「焼き付き」という現象を起こします。表面がガサガサになり、ツヤが完全に失われてしまいます。

これを防ぐためには、以下のポイントを徹底してください。

  • 一点集中で磨かない:
    傷の部分だけでなく、少し広めの範囲を磨いて熱を逃がします。
  • コンパウンドを乾いたまま使わない:
    液剤が乾いて粉っぽくなったら、すぐに拭き取るか、少し足して潤滑させます。
  • ボディが熱い時は作業しない:
    炎天下や、走行直後のボンネットが熱い状態での作業は厳禁です。

塗装の構造と傷の深さ

「深追いは負け」と心得る

DIYにおける最大の鉄則は、「傷を完全に消そうとしないこと」です。

「あと少し磨けば完全に消えそう…」と思ったその一押しが、致命傷になります。光の加減で見えなくなるレベル、あるいは「言われないと気づかないレベル」まで薄くなったら、そこで作業を止める勇気を持ってください。80点の仕上がりで止めることが、愛車を守る秘訣です。

参考ページ:傷消しと塗装剥げの違いとは?|修理の境界線と放置するリスクを専門家が徹底解説

7. 色別の注意点(濃色車・パール)

車のボディカラーによって、コンパウンド作業の難易度は天と地ほど違います。「白い車ではうまくいったのに、黒い車で同じことをしたら大失敗した」というのはよくある話です。

ここでは、特に注意が必要な「濃色車(黒・紺など)」と「淡色車(白・シルバーなど)」の違いについて解説します。

塗装の構造と傷の深さ

黒い車は「オーロラマーク」との戦い

ブラック、ネイビー、濃いレッドなどの濃色車は、DIY難易度が「最高レベル」です。その理由は、傷が目立ちやすいからではありません。「磨き傷(オーロラマーク)がくっきりと見えてしまうから」です。

オーロラマークとは、太陽光や街灯の下で見たときに、ゆらゆらとオーロラのように白く浮かび上がる微細な磨き傷のことです。これは、粗いコンパウンドや汚れたスポンジで磨いた跡が、光の乱反射によって見えている状態です。

濃色車を磨く際は、以下の工程を必ず守る必要があります。

濃色車を磨くための3つの掟


  • 「粗目」は極力使わない。どうしても使う場合は覚悟を決める。

  • 最終仕上げには必ず「超微粒子(鏡面仕上げ用)」を使う。

  • 確認作業は「日向(太陽光)」か「スマホのライト」を当てて行う。

塗装の構造と傷の深さ

白・シルバーは「磨きすぎ」に気づきにくい

一方で、ホワイトパールやシルバーなどの淡色車は、光を反射しやすいため、多少の磨き傷が残っていても目立ちません。そのため、初心者でも比較的きれいに仕上げることができます。

しかし、これが逆に落とし穴となります。「傷が見えにくい=削れている量が見えにくい」ため、気づかないうちにクリア層を薄くしすぎてしまうのです。

「まだ傷があるかな?」と何度も確認しながら磨いているうちに、突然下地が出てくる…という失敗は、実は淡色車の方が多いのです。「見えにくいからこそ、回数を数えて慎重に磨く」という意識を持つことが大切です。

カラータイプ DIY難易度 コンパウンド選びのコツ
濃色(黒・紺・赤) 高(難しい) 「濃色車用」と明記されたものを選ぶ。油分でごまかさないノンシリコンタイプ推奨。
淡色(白・銀) 低(易しい) 比較的どれでもOKだが、ホワイトパールは硬いので少し根気が必要。
メタリック・マイカ キラキラした粒子が入っているため、傷は見えにくいがムラには注意。

参考:車の傷消し費用、相場はいくら?ディーラーと専門店の料金比較から安く抑える裏ワザまで徹底解説

8. 傷消し後のワックス・コーティング

コンパウンドで綺麗に傷が消え、鏡のようにピカピカになったボディ。「よし、これで完璧だ!」と満足して、道具を片付けていませんか?

実は、コンパウンドで磨き終わった直後の塗装面は、いわば「全裸」の状態です。このまま放置すると、あっという間に紫外線や酸性雨のダメージを受け、以前よりもひどい劣化を招いてしまいます。

塗装の構造と傷の深さ

なぜ「保護」が不可欠なのか

コンパウンドは研磨剤ですから、傷と一緒に、ボディにかかっていた「ワックス」や「ガラスコーティング」の被膜も完全に削り取っています。

何も守るものがない新生児のような塗装面(クリア層)は、非常にデリケートです。汚れが固着しやすく、水垢もつき放題の状態になっています。そのため、磨き作業とセットで、必ず「再コーティング」を行わなければなりません。

塗装の構造と傷の深さ

正しいアフターケアの手順

傷消し作業の仕上げとして、以下のステップを必ず実行してください。

  1. 脱脂(だっし)作業:
    コンパウンドには、滑りを良くするための「油分」が含まれていることが多いです。この油分が残っていると、ワックスやコーティング剤が定着しません。「シリコンオフ」などの脱脂剤か、台所用中性洗剤を薄めた水で、磨いた部分を優しく拭き上げ、油分を完全に取り除きます。
  2. コーティング・ワックスの塗布:
    普段使っているワックスやコーティング剤を、磨いた部分を中心に少し広めに塗ります。もし車全体がコーティング施工車である場合は、メンテナンスクリーナーや、同じ成分の補修用コーティング剤を使用してください。
  3. 乾燥と拭き取り:
    規定の時間乾燥させ、綺麗なクロスで拭き上げます。これでようやく、強固な保護膜が形成され、修理完了となります。

「磨いて終わり」ではなく、「磨いて、守るまでが傷消し」と覚えておきましょう。

9. プロの「磨き(ポリッシュ)」との違い

ここまでDIYでの傷消しについて解説してきましたが、私たちプロのコーティング店や板金工場が行う「磨き」とは何が違うのでしょうか。

「同じコンパウンドを使っているなら、結果も同じでは?」と思われるかもしれませんが、そこには埋められない明確な差が存在します。これを知っておくと、「ここは自分でやる」「ここはプロに頼む」という判断基準がより明確になります。

塗装の構造と傷の深さ

機材と環境の圧倒的な差

最大の違いは「道具」と「光(照明)」です。

  • ポリッシャー(研磨機)の使用:
    プロは手磨きではなく、機械(ポリッシャー)を使います。手作業では不可能な「均一な回転」と「一定の圧力」で磨くため、仕上がりの平滑さが段違いです。手磨きはどうしても力がまばらになり、表面がうねる原因になります。
  • 特殊照明による傷の可視化:
    プロの作業場は、太陽光を遮断した屋内で、特殊なLEDライトを四方から当てています。これにより、太陽光では見えないミクロの傷まで浮き上がらせ、徹底的に消し込みます。DIYで「完璧に消えた」と思っても、プロの照明の下で見ると傷だらけ…というのはこのためです。
  • 塗装膜厚の計測:
    熟練のプロは、膜厚計を使って「あと何ミクロン削れるか」を数値で把握しながら作業します。勘だけに頼らないため、安全マージンを残しつつ限界まで綺麗にすることができます。
比較項目 DIY(手磨き) プロ(ポリッシャー)
作業時間 部分的な傷でも30分〜1時間。
重労働。
短時間で広範囲を施工可能。
ただし準備に時間がかかる。
仕上がりレベル 傷を目立たなくするレベル。
近くで見ると磨き跡が残ることも。
鏡面状態。
新車以上のツヤが出ることも。
リスク 局所的な削りすぎによる凹み。
焼き付きは起きにくい。
パワーがあるため、技術がないと一瞬で塗装を飛ばすリスクがある。

塗装の構造と傷の深さ

プロに頼むべき「境界線」

ボンネット全体やルーフ全体の雨染み(ウォータースポット)を、手磨きですべて落とそうとするのは無謀です。何時間もかかり、腕がパンパンになるだけで、ムラだらけの仕上がりになるでしょう。

「ワンポイントの傷はDIY、広範囲の磨きはプロ」と割り切るのが、最も賢いカーライフの送り方です。

10. コンパウンドで悪化した場合の対処法

「やってしまった…」

気をつけていたはずなのに、磨きすぎて白っぽくなってしまった。あるいは、余計な磨き傷が増えて、最初より汚くなってしまった。そんな時、頭が真っ白になるかもしれませんが、焦ってリカバリーしようとするのが一番危険です。

最後に、万が一DIYで失敗してしまった場合の正しい対処法をお伝えします。

塗装の構造と傷の深さ

>絶対にやってはいけない「追い磨き」

失敗した時に多くの人がやりがちなのが、「もっと粗いコンパウンドなら直るかも」「もっと力を入れれば消えるかも」と、さらにハードな研磨をしてしまうことです。

傷が悪化した理由は、すでに「削りすぎ」や「技術不足」にあるケースがほとんどです。そこにさらにダメージを与えれば、修復不能な状態(下地露出)まで一直線です。失敗したと思ったら、その瞬間に手を止めてください。

塗装の構造と傷の深さ

プロに正直に伝えることが解決への近道

コンパウンドでつけてしまった「磨き傷」や「オーロラマーク」であれば、プロの技術(ポリッシャー研磨)で綺麗にリカバリーできる可能性が高いです。

恥ずかしがらずに、お近くのコーティング専門店や板金塗装店に相談しましょう。その際、以下の情報を正直に伝えると、スムーズに適切な処置をしてもらえます。

  • 何を使って磨いたか:
    「カー用品店で買った〇〇という粗目のコンパウンドを使いました」など、番手がわかると助かります。
  • どれくらいの時間磨いたか:
    「一点を10分くらい強くこすりました」など。これにより、塗装がどれくらい薄くなっているかを推測できます。
  • コーティングの有無:
    自分でガラスコーティングなどをしている場合は、それを除去する手間が変わります。

プロであれば、残っている塗装の厚みを見極め、「これ以上は削れないけれど、目立たなくならできる」といった現実的な提案をしてくれます。

失敗は誰にでもあります。大切なのは、致命傷になる前にプロの手を借り、愛車を最善の状態に戻してあげることです。

「消す」よりも「目立たなくする」勇気が愛車を守る

コンパウンドの選び方から実践テクニック、そしてリスク管理までを詳しく解説してきました。

この記事で最もお伝えしたかったことは、「コンパウンドは傷を消す魔法ではなく、塗装を削る外科手術である」という事実です。傷が完全に消えるのは理想ですが、それに固執するあまり塗装(クリア層)という貴重な財産を失ってしまっては本末転倒です。

「傷が少し残っても、パッと見わからなければOK」という80点のゴールを設定することが、DIYで失敗しない最大の秘訣です。愛車の傷と向き合うときは、完璧主義を捨て、安全第一で作業を進めてください。

読者の皆様に今日から実践していただきたいアクションは以下の通りです。

  • まずは「トライアルセット(極細・細目・粗目のセット)」を購入する。(いきなり粗目の大ボトルを買わない)
  • 作業前には必ず「爪チェック」を行い、深すぎる傷はDIY対象から外す。

正しい知識と道具、そして「引き際の判断」さえ間違えなければ、コンパウンドはあなたの愛車を新車のような輝きに戻してくれる素晴らしいツールになります。この記事が、あなたの愛車ケアの一助となれば幸いです。

コンパウンド傷消しに関するよくある質問

Q. ヘッドライトの黄ばみもボディ用コンパウンドで磨けますか?

A. 磨けますが、「ヘッドライト専用」を使うのがベストです。

ボディ用でも黄ばみは落ちますが、樹脂への攻撃性が強い場合があります。専用品にはUVカット成分が含まれていることが多く、再発防止にもなります。

Q. 電動ポリッシャーを買えば、素人でもプロ並みにできますか?

A. 初心者がいきなり使うと、失敗するリスクが非常に高いです。

研磨力が強力すぎるため、一瞬で角の塗装を剥がしたり、バフ目をつけたりします。まずは手磨きで感覚を掴んでから検討してください。

Q. コンパウンドを使った後、洗車機に入れてもいいですか?

A. コーティングで保護した後なら問題ありません。

磨きっぱなしの状態で洗車機に入れるのはNGです。必ずワックスやコーティングを施工し、硬化してから利用しましょう。

Q. ガラスコーティング車にコンパウンドを使っても大丈夫ですか?

A. コーティング被膜が剥がれるため、再施工が必要です。

コンパウンドは被膜ごと削り取ります。磨いた部分はコーティング効果がなくなるので、部分的に再コーティング剤を塗布してください。

併せて読みたい記事:傷消しDIYに疲れた方へ、コバックが教える「プロに任せる」判断基準

お見積り・キャンセル料無料! 見積り・ご予約フォーム